豪雨災害に見えてくる

西日本の豪雨で、家や車や命まで一気に危機にさらされて、酷暑の中での人々の作業がいつまで続くのか・・その画像を見ながら考える。どうしてこんなことになってしまうのか・・それこそが政治というものではないか。大ウソつきの首相と支える政治家と支持する半数近い国民がいる。経済が発展しているとえばっているが、金持ちや上の方ばかり向いて、日々の生活で精一杯の経済的弱者のことなど目にはいらない。沖縄の基地でも政治家と一緒に本州人は冷たいし、地方がどんどんさびれていくのも捨て置いて、山や川の危険区域にも予算を回さず、それこそがこの結果なのだ・・・。

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拡大する西日本大豪雨被害 鮮明になってきた政治の責任 2018年7月10日 日刊ゲンダイ
 9日、安倍首相が11日から予定していた欧州・中東への外遊を中止すると発表した。西日本を中心とする豪雨被害の全容もまだ分からない状況では、当然のことだ。なぜ、もっと早く中止を決めなかったのか。

 豪雨による被害者の数は増え続け、10日時点で死者132人、行方不明者は70人を超えている。豪雨と土砂に沈んだ町が手つかずの衝撃。ようやく救助や捜索が始まった地域もある。生存率が著しく下がるとされる「発生から72時間の壁」を迎える中、安倍政権の豪雨災害対応があまりにヒドイと、批判は広がる一方だ。

 気象庁は5日の午後2時には、臨時会見で記録的大雨の恐れがあるとし厳重警戒を呼び掛けていた。すでに住民への避難指示も出ていたその日の夜、安倍が議員宿舎で開かれた自民党議員との懇談会に参加し、酒盛りに興じていたことに怒りの声が上がっている。参加議員がSNSに投稿した写真には、笑顔で乾杯する安倍や小野寺防衛相、上川法相らの姿がある。豪雨災害の危険が強まり、翌日には元オウム真理教幹部7人の死刑を控えている政権の面々とは、とても思えない。

 批判が拡大していることを受け、自身も会合に参加していた竹下総務会長は、9日になって「どのような非難もお受けする」とか言っていたが、毎度のことで、こんなのポーズだけ。会合を延期するという常識的な判断すらできない政権に、マトモな災害対応ができるものか。この間の対応を見れば、今頃になって安倍が「全力であたってもらいたい」と指示したところで、鼻白むだけなのである。

■災害対応より総裁選が大事か

議員宿舎自民党の若手議員が閣僚や党幹部と懇談する『赤坂自民亭』は15年4月に始まり、今回が27回目だったそうですが、安倍首相の出席は初めて。9月の総裁選に向けた選挙活動の一環でしょう。3選が確実になってきた総裁選と外遊の準備で浮かれ、災害対応にはまったく思いが至らなかったのではないか。8日にようやく非常災害対策本部を設置して、『先手先手で被災者支援にあたって欲しい』などと言っていましたが、その時点ですでに後手後手で、危機管理能力の欠如を露呈しています。安倍首相は何かにつけて民主党政権東日本大震災への対応を批判してきましたが、安倍政権のお粗末な災害対応は、民主党を批判できるようなレベルではありません」(ジャーナリスト・横田一氏)

 安倍は9日も、公邸に自民党静岡県議を招いて会食。総裁選での地方票固めの一環だ。会食では静岡名産のメロンが話題に上り、安倍は「静岡のメロンは非常においしい」と言って、TPPで静岡の農産物を海外に広めることを提案したという。

 未曽有の災害で、食べるものにも困っている被災者がいるというのに、メロンか。

 この非常時に選挙対策とは、やはり安倍は被災地のことなんて興味がないのだろう。

 北朝鮮がミサイルを飛ばせば、すぐさまJアラートで国民を叩き起こすくせに、平成最悪の豪雨被害はまるで他人事。この初動の遅さ、鈍さはいったい何なのか。

 さすがに、いま自衛隊革命記念日の軍事パレードに参加させるためにパリに連れて行くわけにいかず断念したようだが、外遊もギリギリまで可能性を探っていた。災害対応より、総裁選や自己アピールの方が大事とみられても仕方ない。 

 
自然災害への対策よりミサイル防衛にかまける愚

 それにしても、日本では豪雨による水害や土砂災害が年々、ひどくなっているのではないか。

 今回も甚大な被害が出ている広島県では、99年6月の集中豪雨でも新興住宅地などで土砂災害が発生し、32人が犠牲になった。14年8月にも豪雨の影響で土石流が住宅地を襲い、70人以上が犠牲になった。

「自然災害の被害が拡大しやすくなったのは、政権の危機意識だけの問題ではない。歴代自民党政権による“人災”の側面が大きいのです。社会環境学者で治水政策に詳しい滋賀県嘉田由紀子前知事も言っていますが、倉敷市などで町が水没してしまったのは、治水で最も重要な堤防補強がおろそかにされ、ゼネコンが儲かるダム建設を自民党政権が優先してきたことが原因です。また、古くからの地主は経験的に水害リスクの高いところを知っているのに、黙って宅地開発業者などに土地を売って儲けてきた。そういう土地に新興住宅地や福祉施設が建てられてきました。地主側は地価が下がるのを嫌って、ハザードマップの公開には反対の立場です。そういう地主に支えられ、富裕層の代弁をしてきたのが自民党であり、庶民はリスクを知らされないまま、ローンを組んで買ったマイホームが水没してしまう。災害は自然現象であると同時に社会現象でもあるのです」(横田一氏=前出)

 自民党政権が農家を切り捨て、公共事業をバラまき続けてきたことも地方を弱体化させた。農業の担い手はいなくなり、過疎化が進んだ集落は孤立化する。

 災害に弱い町がそこらじゅうに増えてしまった。 

「山間部の水田は自然のダムの役割を果たしていました。それが耕作放棄地と化し、山を間伐して管理する人もいなくなって、“緑のダム”としての森林の機能も失われてしまった。林業が衰退したのは、昭和30年代に木材の関税をゼロにして自由化を進めたせいで、材木の値段が下がってしまったからです。それで山が崩壊し、水が止まらなくなってしまった。無理に宅地化すれば、土砂崩れも起きやすくなります。二酸化炭素の自然循環で環境を守ってきた農業や林業が廃れ、温室効果ガスが大気中に広がったことも、各地の豪雨に影響しています。政治の責任は大きい。今回の豪雨や土砂災害は、そういう意味では人災なのです」(東大教授・鈴木宣弘氏=農政)

■森林環境税でハゲ山を増やすのか

 過疎化を推し進め、山を守らなかった自民党政治が被害を拡大させた。そんな地方にトドメを刺そうとしているのが安倍だ。

 新自由主義に突き進み、経済格差を広げ、総仕上げのTPPで地方と日本の農業を殺そうとしている。

「安倍首相はよく『国民の生命と財産を守る』と言いますが、上っ面の言葉だけなのです。国土や国民の安全よりも、常にオトモダチ企業の利益を優先してきた。今年度の税制改革で森林環境税が創設されることになりましたが、これだって、森林を守るためではなく、ハゲ山をつくるのに使われるのです。自民党は、手入れがされていない山は許可なく伐採していいことにし、来年からは国有林も、企業が勝手に切っていいことにするという。大企業はバイオマス発電のために自由に森林を伐採し、利益を得ます。その木を切る費用を森林環境税で補填しようとしているのです。今回の西日本の豪雨も、たまたま広範囲で甚大な被害が起きたわけではない。『今だけ、カネだけ、自分だけ』で目先の利益を追求してきた安倍政治のツケなのです。ここで反省しないと、取り返しがつかないことになる。秋の総裁選で安倍首相を延命させたら、この国はボロボロになり、自然災害のたびに、もっとひどい被害が出るでしょう」(鈴木宣弘氏=前出)

 この国では毎年、台風や集中豪雨で犠牲者が出る。地震も頻発している。ミサイルより、自然災害に見舞われる確率の方が断然、高いのだ。しかし、ミサイル防衛にはカネを惜しまない安倍が、災害対応には無関心で、豪雨被害の拡大が懸念される最中に能天気に酒を食らっていたという事実。西日本の有権者は、こんな目に遭っても自民党の安倍政権でいいのか。

 今こそ本気で怒らないと、いつまた同じことが起きるか分からない。犠牲になるのは、いつだって庶民なのだ。